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Wonderful World Of The Pen Friend Club

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Wonderful World Of The Pen Friend Club
2017/02/08
・2019/06/19 (Remixed & Remastered Edition)

[2023Mix]
配信開始日:2023/8/23
発売元:Sazanami Label
https://diskunion.lnk.to/SZDW3026

Track List

  1. ふたりの夕日ライン

  2. 微笑んで

  3. River Deep - Mountain High

  4. Born To Be Together

  5. ソーダ水の空

  6. 夏のペーパーバック

  7. Love's Lines, Angles and Rhymes

  8. 8月の雨の日

  9. Wonderful World Of The Pen Friend Club

  10. Sherry She Needs Me

  11. ふたりの夕日ライン (Backing Track)

  12. 微笑んで (Backing Track)

  13. River Deep - Mountain High (Backing Track)

  14. Born To Be Together (Backing Track)

  15. ソーダ水の空 (Backing Track)

  16. 夏のペーパーバック (Backing Track)

  17. Love's Lines, Angles and Rhymes (Backing Track)

  18. 8月の雨の日 (Backing Track)

  19. Wonderful World Of The Pen Friend Club (Backing Track)

  20. Sherry She Needs Me (Backing Track)

The Pen Friend Club 『THE EARLY YEARS』発売に寄せて

 

ペンクラ初期4作のRemixed & Remastered Edition. 

「初期」「THE EARLY YEARS」という名付けがすでにペンクラらしさを醸し出している。そしてただの再発と侮る無かれ。コーラスの多くが差し替えられ、リミックスによって各楽器の存在が浮き彫りとなった本作は「改作版」と捉えることもできる。手に入れないわけにはいかない。コーラス入りのカラオケを全作品に収録したことも、平川のコーラスワークやミックスに対しての自信と伺える。各作品彩り鮮やかにアップデートされているのだが、特に最初期「Sound Of The Pen Friend Club」においてその変化は顕著である。また、楽器のステレオ定位変化等もあるので、旧作と聴き比べも楽しい。ミックスやマスタリングは時代によって、その聴こえ方も聴かせ方も変わってゆくもの。「決定版」と伺っているが、将来「オリジナルミックス」をリマスターしている平川の姿が目に浮かばないでも無い。各作品毎にボーカリストが変わる妙もお楽しみに。ご堪能あれ。

 

2019.4.30 カンケ

●推薦コメント 

 

Throughout most of 2016, listening to The PenFriend Club albums became my favorite thing to do while traveling on those long flights. Their music captured the spirit of the jet-set and made me feel as if I were not only traveling through space, but traveling through time. Not just backward in time, but forward as well. Because as much as mastermind Yuichi Hirakawa pays proper respect to the past, he also creates sound that propels me into the future.

This is why I am very excited about the group's newest effort "The Wonderful World Of The PenFriend Club." As they have done on past albums, some impeccable choices have been made for cover material. Some lesser known songs by The 5th Dimension, The Ronettes…the classic "River Deep, Mountain High" and arguably the best version of "Sherry She Needs Me" I have ever heard! Sure, the original Beach Boys track from 1965 is amazing, but it was never finished properly. Brian made several more attempts at the song but it never lived up to the magic of the original session. But THIS version by The PenFriend Club does! Every 12-string electric guitar and brass section wall of sonic detail is here! And I adore the female vocal approach on it. In fact, I must confess that I'm a bit of a female vocal junkie. I'm sure this explains the natural affinity I have for this group. I also must confess that I am jealous of Mr. Hirakawa because he has the greatest job in the world. I DREAM of playing soft West Coast pop surrounded by by beautiful female musicians and singers! Mr. Hirakawa is my hero.

 

But let's get back to the music. So far I've pointed out the more popular covers, but it wouldn't be fair if I didn't spotlight my absolute favorite things about the new album. As much as like the tracks that I mentioned earlier, I think the greatest joy comes from a vicarious Japanese pop experience which occurs while listening to their original material, and from their choice to include songs by legendary pop songwriters of Japan. On their last album, my favorite track was Tatsuro Yamashita's "Saturday Lover" and for the new album they chose "Summer Paperback" by Eichi Ohtaki who's music I've become obsessed with these last 5 years. On last year's album, I believe Mr. Hirakawa's original songs ("What A Summer", "Before The Summer Ends") are as good as any of the other (cover version) songs. And on this new album, he continues to advance his craft with songs like "Two Sunset Lines" and "Rainy Day In August." At some point, I think I will be making a custom compilation of the groups' original songs only. That's how good they are!

 

 

Darian Sahanaja (WONDERMINTS / Brian Wilson Band)

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THE SAINTS(1977)やFLAMIN' GROOVIES(1983)のヴァージョンも素晴らしかったIKE AND  TINA TURNER『River Deep Mountain High』を選曲する時点でも信用できる、大好きなバンドによる最高のアルバムです!

吉田豪 (プロインタビュアー・プロ書評家)

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ブライアン・ウィルソンが「She Says That She Needs Me」という形で完成させ、自分なりに決着をつけた楽曲を、1965年〜66年当時のブライアンならどう作っただろう?という “イマジネーション” でペン・フレンド・クラブが完成させた「Sherry She Needs Me」。もうこの1曲だけで降参だ。

それをアルバムの最後に持ってきた意志、その曲の前にインスト曲を配置した意図に胸が熱くなる。

 

音楽プロデューサー 竹内 修 (wilsonic)

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 極めてマニアックな音楽的アプローチを持って、この上ないポピュラリティを獲得してきた偉大なるポップ職人たちがいる。大滝詠一しかり、山下達郎しかり。ペンフレンド・クラブはその精神をしっかり受け継いでいる。

 そんな彼らの4作目となる『Wonderful World Of The Pen Friend Club』には、究極のフィル・スペクター作品2曲に象徴されるカヴァーとともにオリジナル曲がずらりと並ぶが、マニアックなカヴァーに心を奪われつつも、実はこれらオリジナル曲の出来がすこぶる良いのに気づく。タイトル曲がインストゥルメンタルというのもたまらない演出だが、いずれ、数多くのカヴァーを生み出す可能性を秘めたこれらの曲に出会えたことに心が高鳴る。

 このアルバムは長く聴き続けられるであろう作品である。間違いない。
とにかく聴いてほしい。そして、この素晴らしさを一緒に体感してほしい。

 

犬伏 功(音楽文筆家)

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しっかりと60年代と“今”をつないでいる4枚目は、感嘆符の連続だ。

これは本当に衝撃的な良さ!!

エバーグリーンなPOPSマナーと、都市に住む若者のレイドバックが溶け合った柑橘系。
風通しの良いグルーヴ感と、大好きな音楽への感謝がつまったアレンジは、聞くほどに胸にせまる。
これまで同様に、マニアを微笑ませるカバー曲のセンスはもう揺るぎないのだが、これまで以上に作曲家として平川氏の魅力が全面に現れたこのアルバムの魅力に、日本の音楽シーンがいかに豊穣かを実感する。

さぁ楽しもう!

森本書店

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川のように深く、山のように高い志を持った彼らはきっと音楽の女神(ミューズ)と一緒になるために生まれてきたに違いない。そんなザ・ペンフレンドクラブはいつだってぼくを幸せな気持ちにさせてくれる。音壁に包まれた愛のロンドをひとたび耳にすれば、そこはワンダフル・ワールド。目を閉じれば見えるよ、あのカリフォルニアの夢が。 音楽ファンのみならず万人を虜にする完全無欠のポップ・アルバムがいまここに誕生した。

 

山田順一(ライター、エディター&リサーチャー)

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サックスを加えた7人編成で、より深遠なサウンドを目指すペンフレンドクラブ

年1作のペースで順調にアルバムを発表しているペンフレンドクラブ、今回のアルバムではヴォーカリストが藤本有華に交代、さらにサックスに大谷英紗子を加えた7人編成となり、よりサウンド面での幅と深みを増している。
本作は日本語オリジナルが3曲に増え、新潟のアイドルグループRYUTistへの提供曲のセルフカヴァー『ふたりの夕日ライン』、大滝詠一のカヴァー『夏のペーパーバック』、タイトル曲となった初のインストゥルメンタル『Wonderful World Of Pen Friend Club』、残りが60〜70年代アメリカン・ポップスの英語カヴァー、それぞれ恒例のモノとステレオの2トラックずつという構成である。
特に英語カヴァーの4曲は、これまでのペンフレンドクラブの傾向と比べて、かなり深遠なサウンドや詞を持つ曲が選ばれており、バンドとしてのさらなる成長や深化を窺わせる。

1. 『ふたりの夕日ライン』
新潟の女の子4人組アイドル・グループRYUTistにリーダー平川雄一が提供した曲。ポップスとは本来ティーンエイジャー向けのものであり、40代以上のポップスオタクだけのものではないことを感じさせてくれる快作。

2. 『微笑んで』
藤本のハイトーンが冴えるオリジナル。バッドフィンガーあたりのブリティッシュ・ポップの影響を感じさせるサウンドだ。

3. 『River Deep - Mountain High』
ジェフ・バリー&エリー・グリニッチの共作で、『Be My Baby』など循環コードのシンプルな作品が多かった彼らの作品でも最高傑作と呼ばれる曲。オリジナルは66年発表のアイク&ティナ・ターナーで、プロデュースはフィル・スペクター。スペクター・サウンドとしても最高峰と称される曲。ペンフレンドクラブはこの大曲に果敢に挑戦している。

4.『Born To Be Together』
バリー・マン&シンシア・ワイルの共作による、ロネッツ65年のシングル曲。これまでアンダース&ポンシア作品をこぞって取り上げていたペンフレンドクラブとしては、ロネッツの作家陣では最もコード進行の凝った曲を作るマン&ワイル作品を取り上げることは意欲的な挑戦だろう。

5.『ソーダ水の空』
ミディアム・テンポでシャッフル・ビートのオリジナル曲。ビーチ・ボーイズの『Deirdre』のサウンドに影響を受けたフレーズが随所に登場するのが微笑ましい。

6.『夏のペーパーバック』
大滝詠一の84年発表のベストセラー・アルバム『EACH TIME』収録曲のカヴァー。縦横無尽に詰め込まれたサウンドを7人でよく再現している。ここでは中川ユミの操るパーカッションに注目。

7.『Love's Lines, Angles and Rhymes』

ペンフレンドクラブとしてはかなり意外な選曲。フィフス・ディメンション、71年全米6位のヒット曲。ダイアナ・ロスやブラザーフッド・オブ・マンも録音している。作者は今なお活動する白人女性シンガー・ソングライターのドラティア・ジョイス。アダルトなムードの難曲だが、ペンフレンドクラブは見事に消化している。特に西岡利恵のランニング・ベースが聴きどころ

8.『8月の雨の日』
ウォール・オブ・サウンドへのオマージュをたたえたオリジナル。大谷のサックスが大幅にフィーチャーされている。

9.『Wonderful World Of The Pen Friend Club』
ペンフレンドクラブ初の歌入れを前提としないインストゥルメンタル曲。ビーチ・ボーイズの『恋の夏』やジャン&ディーンの『セイヴ・フォー・ア・レイニー・デイ』あたりに通じるサウンドだ。

10.『Sherry She Needs Me』
ビーチ・ボーイズ・マニアの間では長年知られていた、複雑な経歴を持つ未発表曲のカヴァー。『Guess I'm Dumb』と同じくブライアン・ウィルソンとラス・タイトルマンの共作。当初『Sandy』というタイトルで65年録音開始されたが、リード・ヴォーカルの録音は76年にしゃがれ声になったブライアンによりようやく完成。2013年に『MADE IN CALIFORNIA』で、65年録音のコーラスがミキシングされてようやく公式発表された。一方ブライアンは『SHE SAYS THAT SHE NEEDS ME』とタイトル・歌詞を変えたリメイク・ヴァージョンを98年に『IMAGINATION』で発表した。ペンフレンドクラブのヴァージョンは2013年ヴァージョンを基本にしつつ随所にオリジナルのアレンジを加えており、平川がBメロとサビの終わりのリード・ヴォーカルを取っている。ハル・ブレインのテクニカルなドラムを忠実に追従した祥雲貴行のドラムさばきにも注目したい。

 

鰐部知範(BBFUN-japan会長、音楽ライター)

 

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屈指のナイアガラーでもある哲学研究者、内田樹氏のブログ「内田樹の研究室」(引用著作権フリー)の2013年12月31日の記事「大瀧詠一の系譜学」(『ユリイカ』「はっぴいえんど」特集への寄稿文の再掲)より、以下を転記したい。

『すぐれた音楽家は、どのような音楽的リソースからも自由に楽想を引き出すことができる。「歌は歌だ」という大瀧さんのことばを私なりに書き換えると、こんなふうになります。』 『過去を歴史のなかに封印することなく、つねに活性化させ続けること。大瀧さんのこの方法論的自覚こそ、系譜学的思考の核心をひとことで言い切っていることばだと私は思います。』

「大瀧さん」について語られたこれら2つのセンテンスは、そのまま「ザ・ペンフレンドクラブ」に置き換えてもぴったり当てはまる。

 

「Wonderful World Of The Pen Friend Club」 じっくり目を閉じて本作を聴きながら、真っ先に思い浮かんだのは、アルバムの先行シングル"ふたりの夕日ライン"のタイトルや歌詞、ジャケット等が想起させる太陽の様々な表情、なかでもザ・ビーチ・ボーイズのアルバム「サンフラワー」のような、「陽だまり」「陽射しの中」のイメージだ。 これを書く前に、彼らのホームページに今も掲載してもらってる、以前書かせてもらった2ndEP「Four By The Pen Friend Club(CD-R)」の紹介文をもう一度読んだ。

「オリジナル曲"I FELL IN LOVE"。この曲こそが本作のベスト・トラック。」確かにそう書いていた。 とは言ったもののそこから僅か3年で、ザ・ペンフレンドクラブがここまでオリジナル曲が充実したバンドに化けるとは、正直想像もできなかった。

本作のオリジナル曲は以下5曲。 冒頭を飾る、先述の先行シングルにも収録された、リーダー平川が初めて外部アーティストのために書き下ろした同曲のセルフカヴァーと、ニール・ヤングのようなギター・ソロが印象的な"微笑んで"。 まさに「サンフラワー」の名曲"Deirdre" などのエッセンスをペンクラ・サウンドに変換させた"ソーダ水の空"。

大瀧メロディーの影響色濃い「12月」ならぬ "8月の雨の日"。ブライアン・ウィルソン作の"少しの間""恋の夏""キャビネッセンス"を彷彿させる、荘厳かつ儚げな美しさが郷愁をそそる、初のインスト作(でありながら、背後に聴けるハーモニーも白眉)であるタイトル曲。

そして、 これらオリジナル曲の曲想から自然と沸き起こったかのような歌詞は、すべて堂々たる日本語による物となった。 カヴァー曲の選曲も、例えばショートケーキだったら上に乗ってる苺から真っ先に食べる!と言わんばかり、躊躇、妥協まったくなし。

フィル・スペクター関連曲ならば、ザ・ロネッツのファンにとっては定番/隠れた名曲のどちらにも該当する「あの」シングル曲や、アイク&ティナの超高難易度曲を物怖じなく選び、やはり正面から直球カヴァー。 「陽だまり」のイメージと言えば、アソシエイションを始めとする数々の「サンシャイン・ポップ」名曲を手掛けたボーンズ・ハウがプロデュース&エンジニアリングを行い、本家レッキング・クルーが演奏したフィフス・ディメンションの"Love's Lines, Angles and Rhymes"のカヴァーもそうだ。

さらに、彼らの2ndアルバム「Spirit Of The Pen Friend Club」でカヴァーされた、ラス・タイトルマンとブライアン・ウィルソンによる"Guess I'm Dumb"の双子の姉妹とも言える、もう一つの共作曲である"Sherry She Needs Me"を取り上げ、ザ・ビーチ・ボーイズ版が成し得なかった、終盤のコーラス・ワークや演奏アレンジの落としどころを完璧に補完し、オリジナルが公式未リリースであったことを差し引いても、本家を上回るヴァージョンとして完成させたことは、特筆すべき点だ。

 

これまでも一貫してそうだったが、リーダー平川のこうした「目に見えない因果の糸」を拾い上げる直観力とそれを確実に自分の物として昇華させる手腕には、いつも感服させられる。

サウンド面では、2ndアルバム以降不動の5人のペンクラ・レッキング・クルーによる、常に的の中心を射る的確な演奏に加え、本作から加入のサックスがアレンジに一層の重厚さともう一つの旋律をもたらし、彼らが目指し、標榜する'60年代中期ウェストコースト・ロックの先人達のサウンド・エッセンスを、よりはっきりと高い次元で自家薬籠中の物としている。

そして、歴代ヴォーカルの中でも、特にスペクター関連曲との相性が最も良いソウルフルさ、幅広い声域、まっすぐで爽やかな抜けのよさを兼ね備えた、藤本有華による風のように駆け抜け、イメージをどこまでも飛翔させる歌唱が、情熱ほとばしる莫大な音符の情報量で爆発寸前のサウンド・プロダクションの熱をギリギリのところで拮抗させ、破綻なく見事に着地させている。

あらためて、ザ・ペンフレンドクラブの最大の魅力は、彼らが先人の編み出した手段を他に類を見ないレベルで追求し、その結果極めて緻密かつマジカルな音像を現在進行形で作品として産み出し続ける一方で、それと一緒に「バンド」としてのマキシマムな熱の痕跡が、どんな時でもまず第一に作品やライヴの中で感じられることだと思う。

 

ザ・ペンフレンドクラブの素晴らしき世界。 遠い将来に希望を持ちにくい、刹那的で世知辛いトーンが増していく昨今の世界情勢において、彼らの音楽とその実現へ取り組む真摯な姿こそ、信じることのできる数少ない確かな本物の現象、希望のひとつ。

最後に、昨今話題の映画の言葉を借りるならば、まさにこのような気持ちだ。

「ありがとう、この世界の片隅にザ・ペンフレンドクラブと出会わせてくれて」

 

TOMMY (Vivian Boys)

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 2014年から年1枚アルバムを出しているPen Friend Club、待望の4枚目のアルバムがリリースされた。①『Sound Of…』②『Spirit Of…』③『Season Of…』に続いて今回は④『Wonderful World Of Pen Friend Club』で、次は何の文字でつなぐのかなという待つことも楽しい。オリジナル曲を作るPen Friend Clubに失礼だが、根っからの洋楽人間である自分にとって最も楽しみにしているのが、他の日本のバンドでは決してカバーしないであろう、マニアックな60’s~70’sのカバー曲の数々である。これが完璧に自分の好きな曲と一致しているのでアルバムが出る度に嬉しくなってしまう。

 

 この4枚で必ず登場するのがフィル・スペクター・プロデュース作品だ。①でロネッツの「Do I Love You」、②もロネッツの「How Does It Feel」③はダーレン・ラブの「Long Way To Be Happy」、そして今回の④はロネッツの「Born To Be Together」になんとビックリ、アイク&ティナ・ターナーの「River Deep Mountain High」だ。スペクターのWall Of Soundは60年代に完成していたので、70年代のスペクターの曲を入れないのは正解だ。さらに「Be My Baby」を選ばない所にセンスの良さが出る。

本来はアルバム収録曲順に紹介するのが当たり前だが、他のライターがそうするだろうから、自分はカバー曲から紹介していこう。「Born To Be Together」は深いエコーは残しつつ、深淵なWall Of Soundの奥まで狙わないで、ヴォーカルの爽やかさを生かしたアレンジにしていた。ロックンロールのブリッジの部分も良くできている。

 スペクターのオーバー・プロデュースの極致ともいうべき「River Deep Mountain High」は、さすがにティナ・ターナーのダイナマイト・ヴォイスではないので、これも爽やかに、しかしロックンロールの部分はしっかり残している。後半のホーンやパーカッションが錯綜する部分も上手だ。

 続いて同じく愛してやまないのがビーチ・ボーイズのカバーだ。①では「When I Grow Up」「Darlin’」と2曲のカバーにプラス、ビーチ・ボーイズ加入前のブルース・ジョンストンの奇跡の傑作、ブルース&テリーの「Don’t Run Away」で3曲、②は「Please Let Me Wonder」とグレン・キャンベルに書いた「Guess I’m Dumb」、さらに一番マニアックな、映画のオープニングでもレコーディングでもビーチ・ボーイズがバッキングを担当したアネットの「The Monkey’s Uncle」とこれまた3曲カバーしたので、③はお休みだった。しかしこの④では1965年の未発表曲「Sherry She Needs Me」という絶妙のカバーを持ってきた。この曲は後にブライアンが2ndソロでリレコしているが、このトラックは最も当時のビーチ・ボーイズを感じさせてくれるサウンドと歌声で最も楽しめた。キーボードの音像もいいし、リード・パートが平川氏に切り替わるのがとてもいい。そして最後に私が特に気になるマニアック枠。

 ①ではトレードウィンズの「New York’s A Lonely Town」(ただしイクイノックス時代にブルースらがカバーした「London’s…」やデイヴ・エドモンズの「New York’s…」のテイストも感じられる)があり、②ではジミー・ウェッブ作・グレン・キャンベル歌の珠玉の名曲の中でもベスト1の「Wichita Lineman」、70年代のニール・セダカに惚れ込んでいる私にとって嬉しい「Love Will Keep Us Together」(キャプテン&テニール用とは言わない)、そしてマニアックさでは最も泣いた1965年にシングルのみでリリース、サンディ・リンツァー&ダニー・ランデル作でボブ・クリューがプロデュースしたまさにフィリップス時代のフォー・シーズンズというラグ・ドールス「Dusty」がカバーされた。

 こんな曲をカバーするバンドがいまだかつてあっただろうか?そして出来上がりは音楽ファンなら誰でも大好きなフォー・シーズンズ・サウンド、知らなかった人には目から鱗という素晴らしいチョイスだった。

 ③では先のグレン・キャンベル&ジミー・ウェッブの作品で2番目に好きな「By The Time I Get To Phoenix」、トレードウィンズのカバー「Summertime Girl」、初めての日本人ミュージシャンのカバーはなんと山下達郎、数ある名曲の中でも5本の指に入るほど好きな「土曜日の恋人」のカバーしてくれていた。しかし最も嬉しかったのは、大好きなテディ・ランダッツォ作・プロデュース、ロイヤレッツの「Poor Boy」のカバーだった。テディ・ランダッツォの凄さが分かる=プロ中のプロの証。

 今から20年くらい前に山下達郎さんの命を受けてコレクティングをしている方と知り合いになったが、その一人はご存知バリー・マン・ワークス。もう一人はその頃に日本人でほとんど誰も注目していなかったテディ・ランダッツォのワークスで、さすが山下さんだと嬉しくなった思い出がある。④は?さらに渋いフィフス・ディメンション6枚目のアルバムのタイトル曲「Love’s Lines,Angels and Rhythms」のカバーで、声も歌い方もマリリン・マックーにとても似ていて、実はリードの方はこのタイプの曲を歌いたかったのだろうと一瞬で理解できた。

 そして前回の山下達郎に続くチャレンジ曲は、なんと大滝詠一の『Each Time』から「夏のペーパーバック」だ。大滝・山下、それも最も華麗なプロダクションの曲にチャレンジしようとするミュージシャンはまずいない。あのゴージャスでキラキラ輝くような大滝サウンドを忠実に追っても仕方がないと、ライブ用のシンプルなサウンドにしたのが良かった。

 さてここからようやくオリジナル。「ふたりの夕日ライン」はオープニングにふさわしいアップテンポでポップな快作、中間のギターもどこか懐かしくいい響きだ。「微笑んで」はミディアムテンポの佳曲でベースラインとちょっとヘヴィなリード・ギターが印象に残る。「ソーダ色の空」はカントリー・テイストの爽やかなタッチの佳作。

 「8月の雨の日」は本作のオリジナル曲で一番好きな、メロディアスで少し哀調があって爽やかでと…と全てが揃った傑作。絶対に聴いて欲しい作品だ。「Wonderful World Of Pen Friend Club」はギターのリフやブラスの音など、ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」と「Let’s Go Away For Awhile」を思い起こされる印象的なインストで、高いセンスに舌を巻いた。

 相変わらず洋楽ファンをも満足させてくれるこの4thアルバム、おススメである。

佐野邦彦(VANDA編集人)

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現在の日本で「60年代西海岸サウンド」を再現できるバンドは「The Pen Friend Club」より他を知りません。こんな僕は、果たして勉強不足なのでしょうか?

 

4枚目のフルアルバム「Wonderful World Of The Pen Friend Club」は、実に素晴らしい作品です。

 

彼の「ウォール・オブ・サウンド」への追求はさらにエスカレートし、結果、このアルバムでは60〜70年代当時の音像に限りなく近いハーモニー感、そして広がりを表現することに成功しています。

もちろん50年以上前のことですから、録音環境もプロセスも大きく変化しています。録音のテクノロジーは、家庭のテレビと同様、時代とともにアナログからデジタルへ変化しているわけですが、60年代の音楽にとって1か0のいずれかの選択で音を表現することはやはり不向き、ある意味で天敵になることはあきらかです。例えば、デカいスタジオ入って、マルチ回して何とかマイクでウン百万かけて録る方法もあるでしょう。悪くはないですけど、そのやり方では、アルバム1枚出したらバンドも何もかも全てが疲弊でしょう。思い出しか残らない。

 

その上において、平川くんの「ウォール・オブ・サウンド」は、見事なる「ハイブリッド型サウンド」だと思っているんです。

アナログな素材はそのまま活かし、デジタルなものは彼自身の聴感上で見事にアナログ風サウンドに変換。つまり、様々なインプットソースを平川くんという「感性のフィルター」を通すと、アウトプットは不思議なことに全てアナログの懐かしいサウンドに仕上がってくるというもの。だから、ただの懐古主義なんかじゃない。現代のサウンドをも見事に消化しながら「平川流西海岸サウンド」を再構築しているんです。音楽マニアから私のようないちポップスファンまで、全てのミュージックフリークを幅広く虜にする由縁は、ここにあるのではないでしょうか。

では、その「感性のフィルター」とやらを覗き込んでみることにします。そこには溢れんばかりのもの凄い量の音楽情報が詰まってて、裏付けされた音楽の網の目をくぐり抜けた純度の高いサウンドだけが、録音物として落とし込まれ、その繰り返しで、まるでサウンドの地層でも作るかのごとく、積み上げられていくのです。きっと他の音楽家もこの「ハイブリッド型」アプローチをしていると思うのですが、おそらく難易度高いんですね。ここまで完璧なサウンドは、正直聴いたことがありません。

 

と、なると、彼らより他を知らない僕の勉強は、満更でもないってことですね。ああ良かった。

 

鈴木恵(鈴木恵TRIO/EXTENSION58)

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 ペンフレンドクラブのフォース・アルバム『Wonderful World Of The Pen Friend Club』が届いた。この時期彼らのニューアルバムの推薦コメントを書くことが個人的には風物詩となってきたが、新作毎に確実に成長しているのが楽しみでもある。
看板であるヴォーカリストは4代目の藤本有華さんにメンバー・チェンジし、新たにサックス奏者の大谷英紗子さんが参加したことでバンドは更にパワーアップしている。
 
 リーダーでプロデュースも務めるこのバンドのブライアン・ウィルソンこと、平川雄一君の審美眼が垣間見られる収録されたカバー曲は、ザ・ロネッツの「Born To Be Together」、アイク&ティナ・ターナーの「River Deep-Mountain High」とフィレス・レコードの各時代を象徴する2曲と、フィフス・ディメンション(ほぼマリリン・マックーのソロというべきか)の「Love's Lines, Angles and Rhymes」という渋い選曲が心憎い。
またビーチ・ボーイズの65年のアウトテイクで、後にキャロル・ベイヤー・セイガーが歌詞を手直し、ブライアンの98年のソロ作『Imagination』に「She Says That She Needs Me」と改名し収録された、「Sherry She Needs Me」を取り上げていて、相変わらずのマニア振りに脱帽してしまう。
加えて前作の山下達郎氏に続き、大滝詠一氏のサマー・アンセム「夏のペーパーバック」にも挑んでいるのが嬉しくなる。
とにかく選曲された5曲はアレンジ的にも完成されているので、バンドというフォーマットでカバーするは困難だったと思うが、彼らはチャレンジ・スピリットを持ってそれを乗り越えている。
 
 平川君のオリジナル作品では、RYUTistに提供した「ふたりの夕日ライン」のセルフカバーやペンクラ版「Let's Go Away For Awhile」というべきアルバム・タイトル曲など5曲収録されているが、中でも一聴して筆者を虜にしたのは「微笑んで」である。何十年も前から聴いているかのような普遍的なメロディ・ラインと素朴で慈愛に満ちた歌詞、もう多くを語りたくない一級の名曲だ。
このフォース・アルバムを象徴する一曲としてこの「微笑んで」を強く推したい。

ウチタカヒデ (音楽研究家、WebVANDA)

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平川君が5thアルバムの録音を開始したとのFBコメントをみて、あわててお約束の4thアルバムへの感想を書いております~大変遅くなりましてすみません。今回のアルバムの楽 曲については、すでに多くの著名な方々がお書きになってますのでお任せするとして、個人的には今回からメインボーカルとして加入した藤本有華さんの歌がほんと良いです。ライブ で聴いたときより見事にサウンドにマッチしていますし、何より英語の発音が素晴らしいで す。管の大谷英紗子さんの加入もより世界観が広まったと感じます。あと今回、山下達郎氏 のカバーにひきつづき、大瀧詠一氏の曲を見事にカバーしていますが、私の好きな大瀧氏の言葉に「繰り返しは笑いの基本」という言葉があります。最初うけなかった事も、繰り返し 繰り返しやることによって、いずれ笑いにつながる~道が開けるという様な事~音楽も同じ だよ~と大瀧さんは言ってると思ってます。まさしくザ・ペンフレンドクラブもデビュー当時からのゆるぎないコンセプト~それは楽曲だけではなく、バンドとしてのスタイルも含め、 繰り返し実績をつんできたからこそ、この最高傑作が生まれたと思います。今回特にオリジナルの楽曲が素晴らしく、個人的には#8、#9がいいですね。次回作のオリジナル楽曲にも期待しております~きっとまた嫉妬しちゃうでしょうが。

 

鎌倉克行(So Nice) 

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